「ある無線家の筑波山レピータ管理団体との格闘の記録」
(仁義なき戦いつくば市編)


<ドキュメンタリー>
ある無線家のレピータ管理団体との格闘の記録
version 1.5

この記録は、邪悪なる筑波山レピータ管理団体と勇敢にも闘いを挑んだ
ある赤坂アンカバークラブ会員の活動記録を余すところなく綴った感動の物語である。


1991年3月○日(日曜日)
私は、悪しき管理団体に挑戦する為、常磐自動車道を遥か北まで飛ばし、筑波山の
麓までやって来た。
「なんて空気がうまいんだろう...しかし寒い」そう最初に思った事であった。

その日は、とても良い天気であったが、やはり北関東の茨城、3月でも寒い。
しかし、この気温は今から聖戦に臨む私にとって、予定通りであった。
天候までも、応援してくれているかのようである。

午前中は、まず身を清める為、筑波山山頂へ登頂し
ロープウェイで、つつじが丘まで降り、車で下山する事とした。

途中、中腹の筑波山神社に寄り、神に祈願した後、名産「ガマの油」を買った後、
屋上にレピータが設置されている悪の総本山「筑波山京成ホテル」の横にて
悪しき周波数439.02MHz(レピータダウンリンク)に合わせてP.T.Tを押すと
「亀亀ナンミョウ〰亀ナンミョウ!」と叫び聖戦に臨む自分に気合いを入魂した。
一頻り感慨に浸った後、戦場への途へ着いたのだった。

こうして聖戦へと一歩踏み出したのである。

はじめの戦場とし、つくば市の中心にある
第一ホテル 周辺を選んだ。
このホテルは、昭和天皇も宿泊されたという格式高いものであり、場所も筑波山からり
直線距離10Kmと強力な妨害を与えるには最高の場所であった。

現地で筑波山が大きく見え、筑波山京成ホテル側が見通し距離である事を再確認する。
この時既に、今日の為に用意したポケットの深いロングコートを着用していた。

その深いポケットには、(当時としては)コンパクトなSTANDARD C450(DTMF実装)を
ホイップアンテナまで完全に忍ばせ、イヤホン端子にはカモフラージュの為に、
ウォークマン用のヘッドホンを装着し通話内容をワッチできるようにしてある。

鏡で確認するが不審者感は無い。
この気温ならばロングコートを着ていても変では無い。
ここへ来るまでに何人もすれ違ったが、皆コートを着ている事は確認済みだ。

完璧だ.....我ながら深い感動を覚えた。

そして人気の無い建物の裏まで行き、おもむろにC450を取り出すとP.T.Tを押して言い放った。
「筑波レピータ管理団体に告ぐ! 今すぐレピータを停波せよ!さもなくば私が実力で停止させる!!」
挑戦的な言い方をしたのは、このような発言に対し、奴等は頭に血が上り意地になり探索を始める
その事を知っているからである。

聖戦の火蓋は切って落とされた..
..

だが、数秒経っても誰も答えない....レピータからは何も聞こえない....

空振りか?
そう思う方も居るかもしれないが、これはあらかじめ想定していた事である。

私はハンディー機をポケットに戻し、P.T.Tを押しDTMFでモールスを打ち始めた....
モールスの内容は「CQ de JG1WMN」である....
何度か続けていると、突然レピータが切れた...遠隔で送信を落としたのであろう。

レピータはこれで何時間も停波するのか?.... 戦いはもう終わったのか....
これでは不戦勝のようなものだ。 

いや違う....
この停波は違う....

数局でビームアンテナを切って方向を探り、大まかな発信地点が分かったので、
遠隔でレピータを落としたのであろう。
奴らは今頃、現地まで探索に来る準備を開始しているのだろう。

レピータを落とす..その行為は、不必要に自分のコールサインを使われたくないからだ..
いかにも自尊心の強い....いや自意識過剰でバカなカス綿らしい行為だ。

15分が経過しただろうか、何も無かったかのようにレピータが復帰した....

これは妨害局の追い込み体制に入った事を意味する。

敵は間近だ!!!
奴等の連絡周波数である438.14MHzを聞いてみる..
数名がモービルから出ており、こちらへ近づいて来ている事が分かる。
予想を裏付ける内容であった....

念の為、辺りを見回すが、探索車らしきものは見当たらない...
モービルからの信号強度から察するに、まだ見える程近くまでは来ていない。

私はモールスを打ちはじめた。
計画通り、あちこち歩いてモールスを打ち続け、かく乱工作を行った....

しばらく続けた後、連絡周波数を聞いてみる....
数局が59+になっている...近いぞ!
奴らは確実に近くに集まりつつある...

あちこち歩いてモールスを打っては連絡周波数をワッチする。

やはりそうだ...
奴等は私がモービルで移動しながら妨害していると発言している。
歩きながら妨害しているとは思いもしないようだ。

確証が取れたので、計画通り歩きながら1分ごとにモールスを打った。
ポケットの中にハンディー機を忍ばせてポケットに手を突っ込み送信する......
それは誰が見ても、散歩しているが寒いからポケットに手を突っ込んでいる
ヘッドホンもウォークマンを聞いているようにしか見えない。

道を歩きながらモールスを打つ...そして連絡周波数を聞く...

相変らず、奴等はモービルから妨害していると思い込んでいる。
連絡周波数を聞き、歩きながら妨害するほど楽しい事はない。
このような事が出来るのは、レピータの麓だからだ。
はるばるやって来た甲斐が有った.....

途中、探索車とやらが見たくなり、奴等が居ると思われる大きな道路沿に出て
モールスを打った。
しばらく続けるが前から車は来ない...

とその時、後ろからホンダ インテグラが私のすぐ横を徐行運転で通り過ぎていった。
窓には「妨害波探索中」のプレートが.....SM王だヤバイ!
はるか遠い水海道からここまで、僅かな時間で駆けつけるところが奴らしい。
きっと血圧が上がり、顔は真っ赤になっていることだろう.....

しかし、奴は止まる事も無く、そのまま通り過ぎて行った。
モービルからの妨害だと完全に思い込み、その先入観により歩行者には
見向きもしなかったのであろう。

すぐに連絡周波数を聞いてみる...
「おがじいっぺぇー、どこにも見当たらないっぺぇー」
強烈な訛りに噴出しそうになるが、かろうじて抑えた。
その会話内容は奴等が私に気が付いていない事が証明された。

馬鹿な奴等...
連絡周波数を聞くと、全ての行動が手に取るように分かり、次の攻撃パターンを
考えることができる...

それから数時間、私は攻撃を続けた....
道を歩きながらモールスを打つ...連絡周波数を聞く
公園でベンチに座りモールスを打つ...連絡周波数を....
店に入り買い物しながらモールスを打つ...
喫茶店でお茶をしながらモールスを...
本屋で立ち読みしながら...
いろいろなパターンを続けながら、歩いて場所を移動し
モールスを打った後、連絡周波数を聞いて奴等の行動を確認した。

道路へ出て歩くと、幾度と無く、奴等の探索車達が近くを通り過ぎていった...
探索車が通り過ぎた後、まだ見える距離からモールスを打つ...
それでも等は止まらない...
そして連絡周波数を聞く...やはり気がついていないようだ

あまりにも異常な外見の車が何台も徐行運転して周回しているので
その異常さに気がついた人達が増え始めていた。

皆、奴等に対して「変なキモヲタ達、こっち向くな!」と視線を飛ばしているが
私も奴等に対して同じオーラを飛ばしていた為か、何度遭遇しても奴等はこちらを
見ることも無く私に気がついていないようだ。

こんな事を数時間も続けた...
連絡周波数を聞くと、奴等のうち一部がモービルからの妨害では無いと気付いたようだ。
やっと気がついたか....
何時間も、あえて分かるように活動してやったのに、やはり奴等はバカだ。

しかし私も悟った.....
これ以上、同じ攻撃を続ける事は危険だ...
撤収する前に、あらかじめ決めていた仕上げの作戦に入る事とした。

作戦とは....車を駐車したショッピングセンターで買い物をする。
もちろん店内の各階各所で買い物をしながらモールスを打つ....
筑波山に近いだけあって鉄筋コンクリート7階建店内の、どこにいても妨害可能だった。

連絡周波数を聞くと、奴等も気づいたようで、ショッピングセンターの名前を連呼しているが、
さすがに客が多数居る店内まで、ごっついビームアンテナを振って突入するような愚かな行為は
できないらしい....
あんなオタッキー顔で、恥ずかしいお揃いのトレーナを着て、怪しい機材を持って突入してくれば
ショッピングセンター内はパニックになり、警備員に取り押さえられる事になるだろう。
サルのような知能指数の奴等にも羞恥心というものが有るのか...と変に納得してしまった。

買い物が終わり、日も暮れた為、駐車場に止めた車へ戻り、車内からハンディ機で小1時間に渡り
モールスを打った。
それだけ大それた事が出来るのも、筑波山に近い5階建の立体駐場というロケーションだからだ。

しかし敵もさるもの、あれほど反射が多い立地なのに、ショッピングセンターから駐車場へ移動した事に
気づき駐車場の出入口前で張り込みを始めたのである。

私は妨害を止めると駐車場から出た。
すぐ横には73-88のナンバーが付いたJG1WMNカス綿のワゴン車が張り込んでおり、奴は周りが
暗くなったのにグラサンを掛けたまま、駐車場から出てくる車を睨んでいる。
助手席側のダッシュボードには、8ミリビデオがこちらを向いて設置されており、おそらく撮影していると思われる。

じろじろ見ると怪しまれるので、あまり見る事はしなかったが、サンルーフから飛び出したビームアンテナは
ぴったりと駐車場の中を指していた。
それにしても、なんと多くのモービルアンテナが立っているのだろうか...
軽く10本はあるだろう。

私は止められる事もなく、無事に駐車場を脱出した。

それもそのはず、乗っていた車にはアンテナを取り付けていないので知るすべもないであろう。
そして駐車場の反対側(カス綿が張り込んでいる場所の反対側)に廻り込み車を止めると
再び1時間程モールスを打った。

奴等から見るとビームの方向は丁度駐車場の中を指す事になる....
まだ駐車場の中に居ると思いこんでいる事が連絡周波数から分かる。

そろそろ危険だと思い、妨害を止め2〰3Km離れた場所まで移動してから、今日一日遊んでくれた
間抜けな奴らに感謝の言葉を贈ってやった...
「駐車場の出口で無駄な張込みご苦労様...」
連絡周波数を聞いてみる....
「くそ〰!!!現行犯捕捉出来なかった!!!」...

信号強度から、既に駐車場から離れている事は分かっており、逃げられた事を理解しているようだ...

連絡周波数でカス綿の口から「とにかく02でこれからアナウンスをやって帰ります」と怒りに満ちた声が聞こえた...

439.02MHzへ切り替え、筑波山レピータをワッチする...
カス綿が例によって無意味な演説を始める..

しかし奴の口から出た言葉は先ほどの連絡周波数とは全く違っていた。
「こちらはJG1WMN 筑波山レピータ管理団体代表、葛綿 繁...いまご苦労様って言った人...
おたくは、分かってないようだけど全部ナンバーチェックしてましたから..」と相変わらず偉そうな
話っぷりで言う...
そして「土浦55○の○○○○、(メーカ名、車名、塗色)」と続けた...
私の車とは、ナンバーもメーカも色も全く違っていた...
私は笑った.....予想したとおりだ。

私は、車に戻る前に駐車場内でアンテナが付いた車を全てチェックしており、カス綿が言ったナンバーは
その中の1台にあった。
奴等は、駐車場の出口で、アンテナが立っている車だけをチェックしていたのである。

「筑波山レピータ管理団体をなめると、どういう目に遭うか、覚えときな」
その話し方には自信が満ち溢れているかの様に振舞っていた。
その後も、カス綿はそのナンバーと車名を連呼し、「早く声出しなよ!もう分かってるんだぞ」と嬉しそうな声で
言ったのを聞いた途端、私は再度笑った....

そして最後にカス綿が和文も理解できるか試す為、モールスを打つ
「ナンバーチガウ カツワタシゲル ハ バカ ツクバレピータ ハ マケタ」と打ち
常磐自動車道で帰路に着いた....
連絡波を聞くと、和文は分からずDTMFを乱打していたと思ったようだ。

運悪く妨害局としてナンバーをチェックされた人が無事である事を祈りつつ
私は聖戦に勝利した喜びに酔いしれたのであった.....
今も、カス綿の悔しそうなセリフが脳裏に深く焼き付いている。


                完       

この文書は帰還後、千葉2へ報告した内容を元に作成しました。
初版                  平成3年3月27日 copyright 1991(C)SK53
電子化&改版      令和元年9月   1日 copyright 2019(C)SK53&千葉2

改版(version 1.4)  令和2年5月   1日 copyright 2020(C)SK53&千葉2


なお、この「ある無線家の筑波山レピータ管理団体との格闘の記録」(仁義なき戦いつくば市編)」
についての管理は、原作者SK氏から千葉2へ一任されております。 
無断転載及び、出版物などへの無断掲載はお断りいたします。

(千葉2追記)
カス綿が死んだ事は有名であるが、奴は死ぬ間際まで、この時捕まえられなかった事を
悔やんでいたとWA会員から漏れ聞こえていた。
奴はこの悔しさを地獄まで持って行ったと思われる。


                                             
企画・制作 SK53
改変・著作権等管理者 千葉2
(c)1991-2020 SK53&千葉2(赤坂アンカバークラブ) 


戻る

inserted by FC2 system